米株図鑑
English
ウォッチリスト
米株図鑑コラムテーマ

AIデータセンターと電力不足|恩恵を受ける米国株を5分野で解説

生成AIを動かすデータセンターが、米国で大量の電気を使い始めています。電気が届くまで何年も待たされ、電気料金も上がるなか、大手IT企業は原子力発電所と長期契約を結び始めました。何が起きているのかを数字で整理し、恩恵を受ける5つの分野の米国株と、注意したいリスクを解説します。

公開 読了目安 約15分文:米株図鑑編集部

4.4%→最大12%米国の電力に占めるデータセンターの割合2023年の実績と2028年の予測
約11倍米国東部で「将来の電力を確保する費用」の上昇2024/25年度から2028/29年度
約7,300億ドル大手IT4社の2026年の設備投資の計画2020年の約8倍

30秒で読む

要点を5枚のスライドで。スライドだけでも全体がつかめます。

  1. 米株図鑑コラム

    AIデータセンターで 米国の電気が 足りなくなる

    電気が足りず、料金も上がる。恩恵は半導体以外にも広がっている。

    1 / 5
  2. 電気の使用量

    AIを動かすデータセンターは 大量の電気を使う

    米国のデータセンターが使う電気は、2023年に米国全体の4.4%。2028年には6.7〜12%に高まると予測されている。

    2 / 5
  3. 電気料金

    電力の供給が追いつかず 電気料金も上がっている

    米国東部で、将来の電力を確保するために発電会社へ払う費用(ドル/メガワット・日)。

    3 / 5
  4. 大手IT企業の対応

    大手IT企業は 原子力発電所と 長期契約を結び始めた

    天候に左右されず24時間発電でき、二酸化炭素も出さない。契約は20年前後の長期が中心。

    4 / 5
  5. 恩恵を受ける分野

    恩恵は半導体以外の 5つの分野に広がる

    燃料・次世代原子力、発電、発電設備・送電網、電源・冷却設備、AI半導体・通信機器。すでに稼いでいる会社か、期待だけで株価が動いている会社かを、売上や利益の推移で見分けたい。

    関連銘柄を比べる →
    5 / 5

はじめに

生成AIの普及とともに、AIを動かすデータセンターが米国で急増しています。データセンターは大量の電気を使うため、発電所や送電線の建設が追いつかず、「電気が届くまで何年も待たされる」「電気料金が上がる」といった問題が起きています。

本コラムでは、AIデータセンターがどれくらい電気を使うのか、何が問題になっているのか、大手IT企業がどう対応しているのかを数字で整理します。そのうえで、恩恵を受ける5つの分野の米国株と、注意したいリスクを紹介します。

起きていること電気が足りない送電網への接続待ちは約7年に延び、米国東部では電力を確保する費用が約11倍に
広がる恩恵5つの分野の会社半導体だけでなく、電源・冷却設備、発電、送電網、燃料・次世代原子力の会社にも受注が広がる
第1章

AIデータセンターとは何か

AIデータセンターとは、生成AIの学習や回答に使う大量のコンピューターを集めた施設です。普通のデータセンターよりも、はるかに多くの電気を使い、多くの熱を出します。

これまでのデータセンターは、メールやネット通販、動画配信などを支えるサーバーを置く場所でした。AIデータセンターでは、これに加えて、AIの計算を得意とする半導体(など)を何万個も並べ、昼夜休まず動かします。

AI用の半導体は、1個あたりの消費電力が普通のサーバー用の部品より大きく、それを高い密度で並べるため、建物全体で使う電気の量が大きくなります。使った電気の多くは最終的に熱になるため、冷やすための設備にも電気が必要です。

施設の規模も桁違いです。これまでのデータセンターは2.5万〜5万程度が一般的でしたが、AI向けでは100万キロワット(1ギガワット)を超える計画も珍しくありません。たとえばGoogleが米ミネソタ州の人口約4,000人の町パインアイランドに計画する施設は78万キロワットで、小さな町に大型の発電所をまるごと必要とするような規模です。

たとえるなら

普通のデータセンターが「オフィスビル」だとすると、AIデータセンターは「24時間フル稼働の工場」に近い存在です。この工場を動かす電気をどう確保するかが、いま米国で大きな課題になっています。

第2章

どれくらい電気を使うのか

米国と世界の見通し

米国のデータセンターは、2023年に米国の電力の4.4%を使いました。米エネルギー省の委託でローレンス・バークレー国立研究所がまとめた報告書(2024年12月)は、この割合が2028年には6.7〜12%に高まると予測しています。使う電気の量でいえば、5年で最大約3.3倍になる計算です。

2023年(実績)4.4%
2028年(予測)6.7〜12%

米国の電力消費に占めるデータセンターの割合(ローレンス・バークレー国立研究所、2024年12月)。

世界全体でも同じ動きが起きています。国際エネルギー機関(IEA)によると、2025年のデータセンターの電力消費は前年比17%増え、世界全体の電力需要の伸び(3%)を大きく上回りました。IEAは、2030年にはデータセンターの電力消費が2025年のおよそ2倍になると見ています。また2025年の報告書では、2030年までの米国の電力需要の増加分のおよそ半分を、データセンターが占めると分析しています。

大手IT企業の巨額の設備投資

この電力需要を生み出しているのが、大手IT企業によるデータセンターへの巨額のです。

大手IT4社の設備投資の推移マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、メタの合計。5年で約4倍、2026年はさらに倍増の計画

単位:億ドル

出典:各社の年次決算(キャッシュフロー計算書の設備の購入額。マイクロソフトは7月〜翌年6月の会計年度)。2026年は2026年10月時点の各社の計画額の合計(薄い色)で、マイクロソフトはリースを含む暦年ベースのため、実績とは計算の基準が一部異なります。

会社2026年の設備投資の計画
アマゾン約2,200億ドル
アルファベット1,950〜2,050億ドル
マイクロソフト約1,750億ドル
メタ1,350〜1,450億ドル

※2026年10月29日時点で公表されている最新の数字。

このお金の多くが、AI用の半導体やデータセンターの建物、それを動かす電源設備に使われます。

第3章

何が問題になっているのか

問題は、データセンターが電気を欲しがるスピードに、発電所や送電線の建設が追いついていないことです。その結果、「電気が来るまで何年も待たされる」「電気料金が上がる」という2つのことが起きています。さらに、建設予定地の住民の反発も広がっています。

電気が来るまで何年も待たされる

世界最大のデータセンター集積地である米バージニア州北部では、地元の電力会社ドミニオン・エナジーに、データセンターなどから合計約7,000万キロワット(70ギガワット)の電力供給の申し込みが寄せられています(2026年2月時点)。これは、同社がこれまでに記録した最大の電力需要(約2,470万キロワット)の3倍近く(約2.8倍)にあたります。

そのものの古さも壁になっています。米エネルギー省によると、米国の送電線の約70%は建設から25年以上がたち、寿命の終わりに近づいています。古い送電網に都市並みの電力を使う施設をつなぐには、大規模な増強工事と長い時間がかかります。

2022年約4年
2024年約7年

バージニア州北部で、データセンターが必要な電力をすべて受け取れるまでの待ち時間(地元紙の報道)。

電力が足りないため、データセンターを建てても、すぐには電気を使えません。そのため、電力会社を待たずに自分で発電する動きも出ています。2026年7月には、接続まで5年待つと言われた事業者が、計画を自前ので発電する形に切り替え、地元の許可を得ました。

ただし、自前の発電にも課題があります。イーロン・マスク氏が率いるxAI(現在はSpaceXの一部門)は、テネシー州メンフィスの巨大施設「Colossus」に多数のガスタービンを持ち込みました。環境団体は許可された台数を超えていると指摘し、排ガスや騒音に周辺住民の批判が集まりました。また、1か所の発電設備だけでは故障のときに代わりがありません。多くの発電所や蓄電池が互いに支え合う送電網につながっていることは、安定した電力の前提でもあります。

電気料金が上がる

米国東部の13州と首都ワシントンに電気を送る送電網の運営組織PJMは、数年先に必要な発電能力を前もって確保するため、発電所を持つ会社から「その時期に発電できる状態にしておく」という約束を入札で買っています。この入札で決まる「将来の電力を確保する費用()」が急上昇しています。

米国東部の「将来の電力を確保する費用」約11倍に上昇し、2026/27年度から3回続けて上限の価格で決まった

単位:ドル/メガワット・日(発電能力1メガワットを1日確保する費用)

出典:PJMの入札結果の発表(2024年7月、2025年7月、2025年12月、2026年7月)。年度は6月〜翌年5月。上限がなければ、2027/28年度は約530ドル、2028/29年度は約555ドルだった。

2025/26年度のこの「将来の電力を確保する費用」の総額は約147億ドルで、前年度の約22億ドルから大きく増えました。PJMの市場を監視する独立機関は、データセンターの需要がなければ、この総額は約93億ドル少なかったと分析しています。総額の約6割にあたります。

この費用は、地域の電力会社が利用者に届ける電気を確保するために支払うものです。そのため、電力会社はこの費用を電気料金に含めて、家庭や企業から回収します。たとえば首都ワシントンでは、2025年6月から家庭の電気代が月約21ドル上がり、そのうち約10ドルがこの費用の上昇分とされています。

電力会社の収益の仕組みも、料金を押し上げる要因として指摘されています。米国の多くの電力会社は、送電線や変電所などに投資した金額に応じて、一定の利益を料金に上乗せすることが認められています。そのため、設備を多く建てるほど利益が増えやすく、電力会社を監視する団体などは、これが必要以上の設備投資と家庭の負担増につながると批判しています。

米エネルギー情報局(EIA)によると、米国の電力消費量は2025年に過去最高を記録し、2026年と2027年も過去最高を更新する見通しです。同局は、その主な理由としてAIデータセンターと、暖房や自動車などの電化を挙げています。

建設への反発が広がる

電気料金への不安に加え、ガス発電の排ガスや冷却設備の騒音、水の使用を心配する声が、建設予定地で強まっています。シカゴ郊外のイリノイ州ネイパービルでは2026年1月、住民の反対を受けて、市議会がデータセンター計画を6対1で否決しました。近くのオーロラ市は2025年9月から180日間、新しいデータセンターの受け付けを止め、その間に騒音や水の使用などのルールづくりを進めました。こうした動きは全米に広がり、選挙の争点にもなりつつあります。

第4章

大手IT企業の対応

電力会社からの供給を待っていられない大手IT企業は、発電所と直接、長期のを結び始めました。特に注目されているのが原子力発電です。

原子力が選ばれる理由

理由124時間安定して発電できる天候に左右されず、休まず動き続けるAIデータセンターと相性が良い
理由2二酸化炭素を出さない大手IT企業は温室効果ガスの削減目標を掲げており、火力発電だけに頼ることは避けたい

主な原子力の電力購入契約

発表時期買い手相手先内容
2026年1月メタビストラ、テラパワー、オクロ3社と契約。既存の原子力発電所からの購入と新しい原子炉の開発支援を合わせ、2035年までに最大660万キロワットを確保する計画
2025年10月アルファベット(グーグル)ネクステラ・エナジー停止中のアイオワ州の原子力発電所(61.5万キロワット)を再稼働させ、25年間購入。再稼働の目標は2029年1〜3月
2025年6月アマゾンタレン・エナジーペンシルベニア州の原子力発電所から192万キロワットを2042年まで購入
2025年6月メタコンステレーション・エナジーイリノイ州の原子力発電所から約112万キロワットを20年間購入。2027年6月から開始
2024年10月アルファベット(グーグル)カイロス・パワー小型原子炉から最大50万キロワットを購入。最初の原子炉は2030年までの稼働を目指す
2024年9月マイクロソフトコンステレーション・エナジー2019年に停止したスリーマイル島原子力発電所1号機(約83.5万キロワット)を再稼働させ、20年間購入。再稼働は規制当局の承認を前提に2027年の予定

※100万キロワットは、一般的な大型原子炉1基分の発電能力にあたります。

原子力以外の対応

原子力発電所の新設には長い年月がかかるため、すぐに使える電源として天然ガス発電の需要も急増しています。ガスタービン大手のGEベルノバによると、同社のガスタービンの受注残と予約は2026年9月末時点で1億2,200万キロワット分にのぼります。2026年1〜3月期の時点で、契約済みのガスタービンの約2割がデータセンター向けの需要とされ、2029〜2030年の納入枠の残りは約1,000万キロワット分と報じられていました。

また、送電網の完成を待たずに、データセンターの敷地内で発電する動きも広がっています。たとえばオラクルは2026年4月、燃料電池メーカーのブルーム・エナジーから、AI・クラウド基盤向けに最大280万キロワットの電力を調達することで合意し、まず120万キロワット分を契約しました。

電気料金への影響を抑える契約の工夫

地元の電気料金への影響を抑えるための契約も出てきました。第1章で触れたGoogleのパインアイランドの計画では、電力会社Xcel Energyとの契約で、Googleが電力サービスの費用を全額負担するとしています。

使わなくても払う契約した容量の75%分は、実際に使わなくても支払います。早期に撤退する場合は、最低料金の最大8年分を払います。AI需要が急に冷え込んでも、設備の費用が他の利用者に回らないようにするためです。
電源を自ら用意する契約の一環として、風力140万キロワット、太陽光20万キロワット、鉄と空気を使う長時間型の蓄電池30万キロワット(Form Energy製)を電力会社の送電網に加えます。

ただし、この契約はまだ州の審査中です。Xcelは他の利用者にも約11億ドルの利益があると説明していますが、ミネソタ州のエリソン司法長官は2026年10月、逆に約10億ドルの負担になる可能性があると反論しました。特に、15年の契約期間が終わった後、Googleのために用意した設備の費用が他の利用者に回り、数十億ドル規模になるおそれがあると指摘しています。関連する金額の多くが非公開になっている点も問題視しています。「大口利用者が費用を自ら負担する」という契約が本当に家庭を守れるかは、今後の審査で問われます。

小さく分けて建てるという考え方

元米エネルギー省融資プログラム局長のジガー・シャー氏らは、巨大な施設を1か所に建てるより、既存の送電網の空き容量を使う小さめの施設を各地に分けて建てれば、送電網の新設を抑えられると主張しています。ただし事業者にとっては大型を1か所にまとめる方が管理しやすく、設備投資で利益を得る電力会社にとっても、新設が減る方法は選ばれにくいという壁があります。

第5章

恩恵を受ける5つの分野と関連銘柄

AIデータセンターへの巨額投資は、電気が発電所からデータセンターの中の半導体に届くまでの、すべての段階の会社に広がっています。

電気の流れに沿った5つの分野

分野1燃料・次世代原子力発電所の燃料や、新しい原子炉を作る
分野2発電発電所を運営し、電気を売る
分野3発電設備・送電網発電機や送電線を作り、建設する
分野4電源・冷却設備データセンターの中に電気を安定して配り、熱を冷やす
分野5AI半導体・通信機器届いた電気を使ってAIの計算を行う

分野ごとの主な銘柄

AI半導体・通信機器

すでに大きく稼いでいる

AIの計算に使う半導体や、データセンター内で大量のデータをやり取りする通信機器

注目点:エヌビディアは売上の約92%がデータセンター向け(2026年5〜7月期)

電源・冷却設備

すでに大きく稼いでいる

データセンター向けの電源装置、、液体で冷やす装置などの冷却設備

注目点:バーティブの売上は前年同期比61%増(2026年7〜9月期)

発電

長期契約で売上が見えやすい

原子力や天然ガスの発電所を運営し、大手IT企業と長期の電力購入契約を結ぶ

注目点:マイクロソフト、メタ、アマゾンと20年前後の契約

発電設備・送電網

受注残が過去最高

発電用のガスタービンや送電設備の製造、送電線や変電所の建設工事

注目点:GEベルノバのは1,970億ドル(2026年9月末)

燃料・次世代原子力

期待が先行する銘柄を含む

ウランの生産や、などの新しい原子炉の開発

注目点:オクロとニュースケール・パワーは、発電や原子炉の販売による売上がまだない

※企業名は各分野の代表例であり、特定銘柄の売買を勧めるものではありません。銘柄に表示している売上の前年比は、直近の決算の数値です。

各社の数字

各社のデータセンターとの関わりを、決算発表の数字で整理すると次のとおりです。

分野銘柄どんな会社かデータセンターとの関わり(数字)
AI半導体・通信機器エヌビディア(NVDA)AIの計算に使う半導体(GPU)の最大手2026年5〜7月期の売上962億ドルのうち、データセンター向けが890億ドル(約92%)
AI半導体・通信機器ブロードコム(AVGO)大手IT企業向けに、AI専用の半導体や通信用の半導体を設計2026年5〜7月期のAI半導体の売上は167億ドルで、前年同期の約3.2倍
AI半導体・通信機器AMD(AMD)データセンター用のCPUやAI用の半導体を設計2026年4〜6月期のデータセンター部門の売上は67億ドルで、前年同期の約2倍
AI半導体・通信機器アリスタ・ネットワークス(ANET)データセンター内で大量のデータをやり取りする通信機器を製造2026年4〜6月期の売上は30.4億ドルで、前年同期比38%増
電源・冷却設備バーティブ(VRT)データセンター向けの電源装置と冷却設備(液体で冷やす装置を含む)を製造2026年7〜9月期の売上は43.1億ドルで、前年同期比61%増
電源・冷却設備イートン(ETN)配電盤や無停電電源装置など、電気を安全に配る機器を製造2026年4〜6月期、米州の電気機器部門の受注残高は前年同期比33%増
発電コンステレーション・エナジー(CEG)米国最大の原子力発電会社。2026年1月の買収で、米国最大の発電会社にマイクロソフトと20年間の電力供給契約を結び、停止中だった原子力発電所を再稼働させる計画
発電ビストラ(VST)テキサス州や米国東部で、原子力・天然ガスなどの発電所を運営2026年1月、メタと3つの原子力発電所から合計約261万キロワットを20年間供給する契約
発電タレン・エナジー(TLN)東部ペンシルベニア州の原子力発電所が主な資産の発電会社2025年6月、アマゾンに192万キロワットを2042年まで供給する契約
発電設備・送電網GEベルノバ(GEV)発電用のガスタービンや送電設備を製造2026年9月末の受注残高は1,970億ドル。ガスタービンの受注と予約は1億2,200万キロワット分に
発電設備・送電網クアンタ・サービシズ(PWR)送電線や変電所の建設を請け負う工事会社2026年9月末の受注残高は過去最高の637億ドル
燃料・次世代原子力カメコ(CCJ)世界有数のウラン生産会社。原子炉メーカーのウェスチングハウスの株式49%を保有原子力発電の拡大を通じて間接的に恩恵を受ける立場
燃料・次世代原子力オクロ(OKLO)データセンターなどに直接電気を売る小型の原子炉を開発中メタが支援する120万キロワットの計画がある。発電による売上はまだなく、最初の発電所の稼働目標は2028年
燃料・次世代原子力ニュースケール・パワー(SMR)小型モジュール炉(SMR)を開発。SMRとして唯一、米原子力規制委員会(NRC)の設計認証を得ている2026年8月時点で、原子炉の確定した受注はまだない

銘柄を見るときの注意点

「稼いでいる会社」と「期待の会社」が混ざっている

同じ「AI電力関連」でも、エヌビディアやバーティブのようにすでに大きく稼いでいる会社と、オクロやニュースケール・パワーのように売上がほとんどなく、将来の期待で株価が動いている会社が混ざっています。投資する前に、どちらのタイプの会社なのかを確かめることが大切です。

第6章

注意しておきたいリスク

AIと電力の関連銘柄は、成長への期待が株価に大きく織り込まれています。期待が外れたときの下落も大きくなりやすいため、次の5つのリスクを知っておくことが大切です。

1

AIへの投資が減速する

関連銘柄の売上の多くは、大手IT企業の設備投資に支えられています。AIで思うように稼げず投資が減れば、半導体から発電まで幅広い会社の受注が減ります。

2

少ない電力でAIが動くようになる

半導体やAIの技術が進み、少ない電力で同じ計算ができるようになれば、電力需要の見通しが下がります。

−28%中国のディープシークが少ない計算資源で高性能なAIを開発したと発表した際の、ビストラ株の1日の下落率(2025年1月27日)
3

電気料金や環境への反発と規制

データセンターのせいで家庭の電気料金が上がっているという批判が強まると、データセンターに追加の費用負担を求める規制や、電力会社の値上げを抑える動きが出る可能性があります。第3章で見たように、住民の反対で計画が否決されたり、自治体が受け付けを一時停止したりする例も出ており、建設の遅れや計画の見直しにつながるおそれがあります。

4

発電所の建設が遅れる

原子力発電所は、計画から稼働まで長い年月がかかり、工事の遅れや費用の増加が起きやすい事業です。新しい小型原子炉は、まだ商業運転の実績がありません。

5

株価がすでに高い

業績の伸びを上回るペースで株価が上がった銘柄もあります。良い会社でも、買う価格が高すぎれば投資の成果は上がりにくくなります。

よくある質問

Q. AIデータセンターは、なぜそれほど多くの電気を使うのですか?

AIの計算に使う半導体は1個あたりの消費電力が大きく、それを何万個も高い密度で並べて24時間動かすためです。使った電気の多くは熱になるため、冷やす設備にも電気が必要です。

Q. 大手IT企業は、なぜ原子力発電を選ぶのですか?

天候に左右されず24時間安定して発電できることと、発電時に二酸化炭素を出さないことの2つが理由です。休まず動くデータセンターと相性が良く、温室効果ガスの削減目標とも両立しやすいためです。

Q. 電力関連の銘柄は、半導体の銘柄と何が違いますか?

半導体の会社はAIの計算そのものから売上を得ますが、電力関連の会社は、発電・送電・電源設備など、データセンターに電気を届ける段階から売上を得ます。ただし、売上がまだほとんどない次世代原子力の会社も含まれるため、業績を確かめることが大切です。

まとめ

  • AIデータセンターは大量の電気を使い、米国の電力に占める割合は2023年の4.4%から、2028年には最大12%に高まると予測されています。
  • 発電所や送電線の建設が追いつかず、送電網への接続待ちが長くなり、米国東部では将来の電力を確保する費用が約11倍に上がりました。建設予定地では住民の反発も広がっています。
  • 大手IT企業は、原子力発電所との長期契約や、ガス発電・燃料電池による自前の発電で電気を確保しようとしています。
  • 恩恵は、AI半導体・通信機器、電源・冷却設備、発電、発電設備・送電網、燃料・次世代原子力の5つの分野に広がっています。ただし、すでに大きく稼いでいる会社と、期待で株価が動いている会社が混ざっている点に注意が必要です。

米株図鑑で関連銘柄をチェックする方法

米株図鑑の各銘柄ページで、次の点を確かめてください。

STEP 1売上が実際に伸びているか「財務」の売上高の推移で、期待だけで株価が上がっていないかを、直近数年の売上の伸び率で確かめます。例:バーティブ →
STEP 2利益が出ているか「財務」の営業利益と純利益を見ます。売上が伸びていても、赤字が続いている会社は、将来の資金調達が必要になる可能性があります。例:オクロ →
STEP 3設備投資の負担はどれくらいか「キャッシュフロー」で、稼いだ現金に対して設備投資が重すぎないか(フリーキャッシュフローがマイナスになっていないか)を見ます。発電会社や設備メーカーは、工場や発電所の建設に多くのお金を使います。
STEP 4株価が業績に比べて高すぎないかPERなどの指標を、同じ分野の他社や過去の水準と比べます。比較を開く →
STEP 5売上がどの顧客に頼っているか「セグメント」や会社の解説で、大手IT企業数社への依存度を確かめます。依存度が高い会社は、その会社の投資計画が変わったときの影響を大きく受けます。

用語集

GPU
もともとは画像を描くための半導体。たくさんの計算を同時にこなせるため、AIの学習や回答に広く使われている。
キロワット
発電所や設備が一度に出せる・使える電気の大きさの単位。1,000キロワットが1メガワット、100万キロワットが1ギガワット。一般的な大型原子炉1基は約100万キロワット。
設備投資
工場、機械、店舗、システムなどへの支出。
送電網
発電所でつくった電気を、送電線や変電所を通じて家庭や工場に届ける仕組み全体。多くの発電所がつながり、互いに支え合っている。
燃料電池
天然ガスや水素を化学反応させて、燃やさずに電気をつくる装置。建物の敷地内に置けるため、送電網の完成を待たずに電気を確保する手段として使われる。
容量価格
数年先に必要な発電能力を確保するため、送電網の運営組織が入札で決める価格。発電会社は「その時期に発電できる状態にしておく」ことで、この代金を受け取る。費用は最終的に電気料金に含まれる。
電力購入契約
電気の買い手が、発電会社から決まった量の電気を、決まった価格で長期間買う契約。大手IT企業は20年前後の長期で結ぶ例が多い。
無停電電源装置
停電や電圧の乱れが起きても、蓄電池などから電気を送り続け、機器が止まらないようにする装置。
受注残高
注文は受けたが、まだ納品していない(売上になっていない)分の金額。将来の売上の目安になる。
小型モジュール炉
従来より小さい原子炉。工場で部品をつくって現地で組み立てるため、建設期間や費用を抑えられると期待されている。商業運転の実績はまだない。

米国株・投資の用語集(95語)をすべて見る →

出典

本コラムは、公的機関の資料、各社の決算発表、公開されている報道をもとに作成しています。特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。投資の判断は、最新の決算資料などを確認のうえ、ご自身で行ってください。