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アンソロピック上場(ANT)を目論見書で解説|赤字の正体・リスクと恩恵を受ける米国株

対話型AI「Claude」の開発元アンソロピックが、ナスダックへの上場を申請しました。目論見書からは、売上の急拡大と本業の黒字化という明るい面と、807億ドルの純損失、新しいAIを出し続ける必要、独特な議決権といった注意すべき面が見えてきます。数字の中身と、恩恵を受ける米国株を順に解説します。

公開 読了目安 約20分文:米株図鑑編集部

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  1. 米株図鑑コラム

    Claudeの開発元 アンソロピックが上場へ

    銘柄コードはANT。報道では評価額1.5兆〜2兆ドルの、史上最大級のIPOになる見通し。

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  2. 売上

    2026年1〜6月の売上は約163億ドル 前年同期の約14倍

    2026年4〜6月期には、本業のもうけ(営業利益)が初めて黒字になった。

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  3. 売上の推移

    年ごとの売上高は 急カーブで拡大

    2026年は1〜6月の半年分。目論見書より。

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  4. 赤字の正体

    807億ドルの赤字の 約9割は会計上の評価損

    会社の価値が上がるほど、転換社債の評価損が膨らむ仕組み。現金は出ていかない。

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  5. 注意点

    売上の8割超は 半年以内に出た新しいAI

    性能を高めた新しいAIモデルを出し続けることが成長の前提。開発競争で遅れると売上に直結する。

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  6. 顧客

    既存顧客からの売上が 1年で約9倍

    一般的なソフトウェア会社は、1年前を上回れば(100%超)良いとされる。年10万ドル以上を支払う顧客も1万1,900社超に。

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  7. 米国の関連銘柄

    上場の影響を受ける 米国関連銘柄

    アルファベット・アマゾンは保有株の評価が利益を左右し、マイクロソフト・ブロードコムなどは計算資源の支払いを受け取る。

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はじめに

対話型AI「Claude(クロード)」を開発するアンソロピックが、米ナスダック市場への上場を申請しました。2026年10月26日に公開された(Form S-1)からは、売上の急拡大と本業の黒字化という明るい面と、807億ドルという巨額の純損失、独特な議決権の仕組みといった、注意して読むべき面の両方が見えてきます。

本コラムでは、目論見書の数字をもとに、会社の姿、業績、赤字の正体、議決権、巨額の契約、リスクを順に解説し、上場で恩恵を受ける米国株と、上場後に注意したい点を紹介します。数字は、特に断りがない限り目論見書(仮目論見書)によるもので、報道による数字は「報道によると」と明記しています。

明るい面急成長と黒字化売上は半年で前年同期の約14倍。2026年4〜6月期に本業が初めて黒字に
注意したい面赤字・依存・議決権807億ドルの純損失、新しいAIを出し続ける必要、一般株主の限られた議決権
第1章

アンソロピックとはどんな会社か

アンソロピック(Anthropic, PBC)は、対話型AI「Claude」を開発する米国のAI企業です。2021年1月に、OpenAI出身の研究者ら7人が創業しました。本社はサンフランシスコで、従業員は約5,300人(2026年9月末)です。

目論見書は、自社を「何よりもまず研究所である」と紹介しています。画像や動画の生成には力を入れず、企業向けの文章やプログラムの分野に集中しているのが特徴です。

主な製品

区分製品内容
Mythos(Fableを含む)、Opus、Sonnet、Haiku性能と価格の異なる4つのモデル群。Fableは安全対策を施した一般向け版、Mythosは審査を通った利用者向け
アプリClaude.ai、Claude Code、Claude Coworkなど対話、プログラミング、事務作業の代行
開発者向けAPI(Claude Platform)他社が自社のサービスにClaudeを組み込むための仕組み
料金の仕組み(API、クラウド経由)と定額プラン(Pro、Max、Team、Enterprise)売上の約8割は、使った分だけ支払う従量課金。個人向けから大企業向けまでの定額プランは約2割(2026年1〜6月)

経営陣・安全性・日本との関わり

  • 経営陣:CEOは共同創業者のダリオ・アモデイ氏(元OpenAI研究担当副社長)、社長兼取締役会議長は妹のダニエラ・アモデイ氏です。目論見書は「7人の共同創業者は全員、現在も会社に在籍している」としています。
  • 安全性への取り組み:AIの能力が一定の水準を超えるごとに安全対策を強める「責任あるスケーリング方針」を2023年9月に公表しました。最上位モデル「Mythos」は、サイバー攻撃に悪用されるおそれがあるため、審査を通った利用者に限って提供しています。
  • 日本との関わり:2025年10月に、アジア太平洋地域で初の拠点として東京オフィスを開設しました。2026年にはNEC(4月)と富士通(5月)がそれぞれ戦略的な提携を発表しています。
第2章

上場の概要

アンソロピックは2026年10月26日、米証券取引委員会()に上場の申請書類(Form S-1)を公開しました。ただし仮目論見書のため、株数や価格はまだ空欄です。

目論見書でわかること

項目内容
上場先・銘柄コードナスダック・グローバル・セレクト市場、ANT
上場する株式クラスA普通株式(第5章)
主幹事ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー。上場後の株価安定操作はモルガン・スタンレーが担当
引受証券会社合計22社。日本勢ではみずほとMUFGが名を連ねる
株数・価格・調達額未定(空欄)
日本での公募あり。ただし日本の取引所への上場予定はない
グーグルの追加出資上場と同時に、公開価格で最大100億ドル分の株を買う権利を持つ
資金の使い道計算資源とインフラへの投資、人材の採用・定着など
配当これまで支払ったことはなく、当面も予定なし

報道で伝えられていること(目論見書には記載なし)

項目報道の内容出典
上場時期11月16日の週、または感謝祭の週ウォール・ストリート・ジャーナル、ブルームバーグ
評価額1.5兆〜2兆ドルウォール・ストリート・ジャーナル、ロイター
調達額1,000億ドル以上の可能性ウォール・ストリート・ジャーナル
個人投資家への配分株の15〜20%を個人に配分する可能性ブルームバーグ

報道どおりの規模になれば、2026年6月のSpaceX(評価額約1.77兆ドルと報道)と並ぶ、史上最大級のになります。公開価格の仮条件は、訂正版の目論見書で示される予定です。

第3章

業績:売上の急拡大と「新しいAI頼み」の構造

2026年1〜6月の売上高は162.86億ドルで、前年同期(約12億ドル)の約14倍でした。半年だけで、2025年通年(45.85億ドル)の約3.5倍を稼いでいます。

売上高の推移2026年は1〜6月の半年分

単位:億ドル

出典:アンソロピック 目論見書(Form S-1、2026年10月26日)

年ごとの業績

点線の用語をタップすると、意味が表示されます

期間売上高計算資源の費用営業損益
2023年0.41億ドル4.33億ドル▲5.51億ドル
2024年3.86億ドル25.22億ドル▲29.80億ドル
2025年45.85億ドル73.26億ドル▲80.60億ドル
2026年1〜6月162.86億ドル89.45億ドル▲6.93億ドル

▲は赤字。営業損益は、売上高から本業の費用を引いたものです。は、AIの開発や運用に使う、AI用の半導体をそろえたコンピューター設備です。

黒字になった理由:2026年4〜6月期は、が約9.7億ドルと、目論見書に載っている四半期で初めての黒字でした。売上高は前年同期の約14.7倍になった一方、計算資源の費用は約4倍にとどまりました。売上に対する計算資源の費用の割合は、2025年1〜3月期の251%(売上の2.5倍の費用)から48%に下がっています。

7〜9月期は?:目論見書では空欄です。報道によると、会社は投資家向けの非公開の会合で、売上高が約168億ドルだったと示したとされます。

顧客:大企業での利用が急拡大

  • 大口の顧客:直近12か月に10万ドル以上を支払った顧客は、1年前の950社超から1万1,900社超へ、約12.5倍になりました(2026年9月末)。
  • 既存顧客からの売上が1年で約9倍:既存の顧客が1年前と比べて何倍支払っているかを示す指標()は、約900%でした(個人向けの定額プランPro・Maxの利用者を除き、直近3か月と1年前の同じ期間を比べた数字)。一般的な企業向けソフトウェア会社では、100%を超えれば良いとされる指標です。
  • 大企業への浸透度:米国の大企業上位500社の半数超が、年10万ドル以上を支払う顧客です。ただし、これらの企業にとってアンソロピックへの支払いは総費用の平均0.1%未満です。

売上の内訳

区分2025年2026年1〜6月
(使った分だけ支払う)37.96億ドル(83%)130.64億ドル(80%)
定額の7.89億ドル(17%)32.22億ドル(20%)
(参考)売上全体に占めるクラウド事業者経由の割合約47%約48%

クラウド事業者経由とは、アマゾン、グーグル、マイクロソフトのクラウド上でClaudeを購入する形です。従量課金には、法人がAPIで使う分のほか、こうしたクラウド経由の利用も含まれます。

売上の8割超は「発表から半年以内の新しいAI」から

目論見書には「2026年4〜9月に発表したモデルが、7〜9月期の売上の80%超を占めた」という記述があります。ここでいう「」とは、質問に答えたり文章を書いたりするAIの本体のことです。アンソロピックは、性能を高めた新しいモデルを数か月ごとに発表しています。つまり、売上の大半が、発表から半年以内の新しいモデルから生まれているということです。スマートフォンにたとえると、売上の8割以上を、発売から半年以内の新機種が占めているような状態です。

良い面新しいAIが売上を押し上げる新しいモデルを出すたびに、売上が伸びてきたことを示します。
注意したい面開発競争で遅れると売上に直結一度作ったソフトウェアを長く売り続けられる会社とは違います。APIの利用者は他社のAIに比較的簡単に切り替えられるため、巨額の研究開発費と計算資源への支出を続ける必要があります。

そのほかの注目点

  • 顧客の集中度:2026年1〜9月に、1社で全体の売上の10%を超えた顧客はいません。ただし上位5社で全体の売上の約25%を占めます。
  • 規約違反の利用者からの売上:2026年1〜9月の売上の約5〜7%は、利用規約に違反した利用者からのものと会社が推定しています。利用を止めれば、この分の売上は減る可能性があります。
  • :本業で実際に入った現金と出た現金の差です。2025年は26.37億ドルの流出でしたが、2026年1〜6月は39.29億ドルの流入に転じました。
  • :2026年1〜6月は4.82億ドルと、売上の規模に比べて小さな金額です。AI用の半導体やデータセンターを自社で買わず、主にクラウド大手から借りて、使った分を利用料として支払ってきたためです。借りた分の支払いは設備投資ではなく、毎期の費用(上の表の「計算資源の費用」。2026年1〜6月は89.45億ドル)として計上されます。今後は、AI用の半導体を自社で直接リースし、第三者が運営する専用のデータセンターに置いて使う方式(Anthropic Direct)も広げます。この方式では計算資源が使えるようになる前に大きな支払いが必要になるため、会社は設備投資が大きく増える見込みとしています。
第4章

807億ドルの赤字の正体

2026年1〜6月の純損失は807.48億ドルで、売上高の約5倍です。ただし、その約9割にあたる723.88億ドルは、現金の支出を伴わない会計上の評価損です。赤字の大部分は、AIへの投資が膨らんだ結果ではありません。本業の損益()は、1〜3月期の赤字(約16.6億ドル)と4〜6月期の黒字(約9.7億ドル)を合わせて、半年では約7億ドルの赤字でした。4〜6月期だけを見れば、本業は黒字です。

期間営業損益転換社債などの評価損純損失
2023年▲5.51億ドル▲10.45億ドル▲15.31億ドル
2024年▲29.80億ドル▲54.34億ドル▲83.09億ドル
2025年▲80.60億ドル▲343.08億ドル▲419.65億ドル
2026年1〜6月▲6.93億ドル▲723.88億ドル▲807.48億ドル

3項目の差は、主に「その他の収益・費用」です。2026年1〜6月は、グーグル・アマゾンとの株式購入契約などを時価で評価した約88億ドルの費用(これも現金の支出を伴わない)と、約11億ドルの受取利息が含まれます。

なぜ評価損が出るのか

アンソロピックは、アマゾンなどから「」という形でお金を集めてきました。転換社債は、借りたお金を将来、決められた価格で株式に換えられる借入金です。

たとえば(数字は説明のための例)

1株2ドルで株式に換えられる約束をした後に、株式の価値が1株60ドルに上がったとします。貸し手は「2ドルで60ドルのものを手に入れる権利」を持つことになります。会社から見ると、将来渡す価値(負債)が増えたことになり、その増加分を損失として計上します。

目論見書も、この損失は「主に、会社の評価額の上昇に伴って、転換社債のが上がったことによる」と説明しています。会社の評価が高まるほど損失が膨らむ、直感とは逆の仕組みです。

なお、2026年6月末にアマゾンが持つ転換社債の元本は62.03億ドル(利息なし)です。一方、貸借対照表上の時価は1,085.66億ドルに膨らんでいます。アンソロピックには銀行からの借入はありません。

上場後も評価損は続く?

  • 転換社債は、上場に合わせて自動的に株式(議決権のないクラスN株)に転換されます。転換された分は、評価損の計上が止まります。
  • ただし、アマゾンの持株比率が12%を超えないようにする上限があり(アマゾンの判断で外すこともできます)、超える分は新しい社債に書き換えられて残ります。
  • 残った社債は上場後も四半期ごとに転換され、それまでは評価損益の計上が続きます。つまり、上場後の株価の上下で、純損益が大きく振れる可能性があります。

「調整後の黒字」だけを見ない

会社は、評価損や株式報酬などを除いた「調整後純利益」が2026年1〜6月に26.71億ドルの黒字だったと示しています。ただし、これは会社が独自に定義した指標()です。

株式報酬は実質的な費用は、給料の一部を現金ではなく自社の株で渡す仕組みです。アンソロピックでは主にという形で、条件を満たすと従業員がクラスA株を受け取れます。会社は株を新しく発行して渡すため株数が増え、既存株主の1株あたりの持ち分がします。2026年1〜6月の費用は21.85億ドルでした。
上場で費用がまとめて出るRSUの多くは「一定期間(通常4年)働くこと」と「上場または会社の売却」の2つの条件で受け取れます。上場前は費用を計上しておらず、2026年6月末で未計上分が約266億ドル、うち約29億ドルは勤務期間の条件をすでに満たした分です。上場で条件がそろうと、上場の四半期にまとめて費用になります。
一部は現金も出ていく従業員が株を受け取るときの税金は、渡す株の一部を差し引いて、会社が代わりに現金で納めます。目論見書は、この支払いに上場で調達した資金の一部を充てるとしています(金額は未定)。

目論見書は「費用は今後も増え、損失は続くと見込んでいる」と明記しています。

第5章

独特な議決権の仕組み

アンソロピックの株主になっても、一般の投資家が会社の方針に与えられる影響は小さいです。創業者7人の会社が総議決権の50.1%を持ち、取締役の過半は外部の有識者でつくる信託が選ぶからです。

株式の種類と議決権

株式の種類議決権主な保有者
クラスA株1株1票(クラスF株以外の議決権の合計は約49.9%)一般の投資家、従業員、創業者(上場するのはこの株のみ)
クラスN株なし(法律で定める場合を除く)アマゾン、グーグルなどの戦略的パートナー
クラスF株(1株)総議決権の50.1%創業者7人の会社(Founder LLC)
クラスT株(1株)取締役7人のうち4人を選ぶ長期利益信託(LTBT)

取締役7人のうち4人は(LTBT)が、残る3人はクラスA株とクラスF株の株主が合同で選びます。クラスF株は1株で総議決権の50.1%にあたる票数を持ち、新しい株式が発行されると票数も自動的に増えるため、議決権の割合は薄まりません。このため、実質的には創業者側の意向が強く反映されます。このほか、上場後に従業員(創業者を除く)向けのクラスE株も発行されますが、議決できるのは信託の仕組みの変更など限られた事項です。

長期利益信託(LTBT)

2023年に設けられた、会社から独立した組織です。受託者は会社と金銭的な利害関係を持たない立場とされ、AIの安全性、国家安全保障、公共政策などの専門家で構成されます。元FRB議長のベン・バーナンキ氏も、2026年6月に受託者に就任しました。取締役を選んだり解任したりできますが、日々の経営を決める権限はありません。

公益目的会社(PBC)とは

アンソロピックの正式名称は「Anthropic, PBC」です。PBCは「パブリック・ベネフィット・コーポレーション()」の略で、米デラウェア州会社法(DGCL)に定められた会社の形です。PBCも株式を発行する営利の会社で、日本でいう株式会社の一種と考えて問題ありません。利益を上げることも、上場することもでき、非営利団体(NPO)とは違います。違いは、取締役が「株主の利益」だけでなく、定款(会社の根本規則)に書いた公益目的も考えて経営するよう、法律で求められている点です。

項目一般的な会社公益目的会社(PBC)
株式の発行・上場できるできる
取締役が重視するもの主に株主の利益①株主の経済的な利益、②会社の活動に大きく影響される人々の利益、③定款に掲げた公益目的の3つのバランス
公益の報告義務なし少なくとも2年に1度、公益目的の達成状況を株主に報告(DGCL第366条)
  • アンソロピックの公益目的:定款に掲げる目的は「人類の長期的な利益のための、高度なAIの責任ある開発と維持」です。
  • 投資家にとっての意味:目論見書は、これまでは安全性や社会への配慮が、長期的な商業上の成功とおおむね一致してきたとしています。一方で、このバランスを取った判断が、業績やクラスA株の株価に悪い影響を与える場合もあると明記しています。たとえば利用規約では、売上につながるとしても、完全自律型の兵器や大規模な監視への利用を禁じています。
  • 他の巨大IT企業との違い:創業者が強い議決権を持つ仕組みは、メタやアルファベットにもあります。アンソロピックの特徴は、それに加えて、株式を持たない外部の信託が取締役の過半を選ぶ点と、公益目的を定款に掲げている点です。
第6章

巨額の契約とお金の循環

AIを開発し、動かすには、大量のが必要です。アンソロピックはその確保のため、クラウド大手などと長期の契約を結んでいます。

主な契約(目論見書)

相手支払いの約束額期間解約できるか
グーグル約1,145億ドル以上(利用が足りなくても差額を支払う)2026〜2033年原則できない
アマゾン1,100億ドル以上(利用が足りなくても差額を支払う)2026〜2036年原則できない
マイクロソフト449億ドル以上2026〜2033年原則できない
ブロードコムTPU設備のリース料 約1,612億ドル5年間原則できない
SpaceXAI最大1,205億ドル(全面稼働後は月約31億ドル)〜2029年2027年1月・3月以降は90日前の通知で可能
AMD200億ドル超を見込む2027年から金額は見込み

このうち、グーグル、アマゾン、マイクロソフトの3社に支払うと約束した金額だけでも、合計で約2,694億ドルにのぼります。これは、アンソロピックの2026年1〜6月の売上高(約163億ドル)の約16倍、手元の現金と短期投資(約1,317億ドル、2026年6月末)の約2倍にあたる金額です。ただし、支払いは一度に発生するのではなく、2033〜2036年までの長い期間に分かれます。

「総額」は単純に足せない

目論見書には、契約の約束額(2026年6月末で約2,656億ドル)、まだ始まっていないリース(約3,214億ドル)、7月以降の新しい契約(約2,450億ドル)などの数字が並んでいます。ただしこれらは重なり合っている可能性があり、目論見書の「総額」の欄も空欄です。報道で見かける「総額○億ドル」という数字は、試算の仕方で大きく変わる点に注意が必要です。

4種類の半導体を使い分ける

半導体開発元主な調達先
Trainiumアマゾンアマゾン(AWS)
TPUグーグル(ブロードコムと共同)グーグル、ブロードコムの設備リース
GPUエヌビディアマイクロソフト、SpaceXAI、Nscale、Lambda
GPU(MI450)AMDAMD(2027年から)

特定の1社に頼らないことで、供給不足や価格交渉で不利になるリスクを抑えています。

資金の出し手と受け手が重なる関係

目論見書は、アマゾン、グーグル、マイクロソフトの3社が、アンソロピックにとって「投資家であり、顧客であり、販売の窓口であり、競争相手でもある」と明記しています。「販売の窓口」とは、3社が自社のクラウドを通じてClaudeを企業に売っていることを指します。第3章のとおり、売上の約半分はこうしたクラウド経由です。

STEP 1出資するクラウド大手が、アンソロピックに出資したり、転換社債でお金を貸したりする
STEP 2利用料を支払うアンソロピックが、その資金も使ってクラウド大手の計算資源を買う
STEP 3売上・利益になるクラウド大手はそれをクラウドの売上として計上する。保有するアンソロピック株の評価益も自社の利益に反映する

これは不正な取引ではなく、契約の内容も目論見書で開示されています。ただしAI市場の成長が鈍れば、アンソロピックの支払い負担と、クラウド大手の売上・投資利益の両方に、同時に影響が出る可能性があります。

第7章

上場の影響を受ける米国関連銘柄と最新決算

アンソロピックの株は上場まで買えませんが、その巨額の支出を受け取る側の会社は、すでに上場しています。目論見書は、上場で調達する資金の使い道の1つに計算資源とインフラへの投資を挙げており(第2章)、上場で手元の資金が増えれば、こうした会社への支払いを続ける力も増します。一方で、上場後はアンソロピックの株価が日々つくため、株を持つ会社の利益は株価の上げ下げの両方の影響を受けます。

主な銘柄と直近の業績

銘柄アンソロピックとの関係直近の業績
アルファベット(GOOGL)大株主、クラウドとTPUの提供元、競合2026年7〜9月期:売上高1,276億ドル(+25%)、営業利益+30%
アマゾン(AMZN)大株主、転換社債の保有者、クラウドの提供元、競合2026年7〜9月期:売上高2,019億ドル(+12%)、AWS 460億ドル(+39%)、営業利益281億ドル
マイクロソフト(MSFT)株主、クラウドの提供元。Azure上のAIサービス(Microsoft Foundry)を通じてClaudeを企業に販売し、Microsoft 365 Copilotなど自社製品にも組み込んでいる2026年7〜9月期:売上高923億ドル(+19%)、Azure+48%、純利益+32%
ブロードコム(AVGO)TPU設備のリース元、資金の供給者2026年5〜7月期:売上高296億ドル(+86%)
AMD(AMD)AI用システムの提供元(2027年から)2026年4〜6月期:売上高115億ドル(+50%)
エヌビディア(NVDA)GPUの開発元。アンソロピックは主に、マイクロソフトやSpaceXAIなどがエヌビディア製のGPUで用意した計算資源を借りて使う(エヌビディアへの直接の支払額は目論見書に記載なし)2026年5〜7月期:売上高962億ドル(+106%)
マイクロン(MU)AI用高速メモリーの供給元の1つ2026年6〜8月期:売上高542億ドル(前年同期の約4.8倍)

括弧内は前年同期比です。

アルファベット:本業は好調、現金は設備投資で流出

  • 7〜9月期の純利益は前年同期比−24.3%でした。ただし原因は、保有株式の評価損(約87億ドル、主にSpaceX株)です。本業の営業利益は+30%と伸びています。
  • グーグル・クラウドの売上高は307億ドル(+103%)で、受注残高は5,610億ドルです。
  • 一方で、(本業で稼いだ現金から設備投資を引いたもの)は約−91億ドルで、2四半期連続のマイナスでした。AI向けの設備投資が、稼ぐ現金を上回っています。
  • オラクルは10月27日、自社のクラウドでグーグルのTPUを2027年から提供すると発表しました。TPUが外部にも広がり始めています。
  • 自社のAI「Gemini」のアプリ利用者は10億人に達し、アンソロピックの最大の競合の1つでもあります。

マイクロソフト:複数のAIを扱う「マルチモデル戦略」

  • クラウドのAzureやMicrosoft 365で、OpenAIやアンソロピックなど複数社のAIを顧客が選べるようにしています。どのAIが勝っても、自社のクラウドが使われれば稼げる構造です。
  • 巨額の設備投資を続けながら、フリーキャッシュフローの黒字を保っています。
  • OpenAIの大株主でもあり、両社と取引を持つ立場です。

アマゾン:アンソロピック株の評価が利益を左右する

  • 2026年4〜6月期の純利益は626億ドルで、そのうち534億ドルの営業外収益は「主にアンソロピックへの投資から」と報じられています。
  • 7〜9月期は、AWSの売上高が+39%と伸び、営業利益は281億ドル(前年同期は174億ドル)に増えました。一方、営業外の損益は約12億ドルのマイナスで、純利益は207億ドル(前年同期比−2%)でした。前年同期の利益に、アンソロピックへの投資による約95億ドルの評価益が含まれていたためです。
  • このように、アンソロピック株の評価はアマゾンの純利益を大きく動かします。上場後は、アンソロピックの株価が下がると、アマゾンの利益が押し下げられる可能性もあります。

銘柄を見るときの注意点

売上に占める割合は小さい場合もグーグルとの約1,145億ドルの契約は、2026年4月から2033年7月までの約7年間の合計です。年平均にすると約160億ドルで、アルファベットの年間の売上高(直近3か月の1,276億ドルを1年分に直すと約5,100億ドル)の約3%にあたります。追い風にはなりますが、それだけで株価が決まるわけではありません。
投資利益は上下どちらにも動くアマゾンの例のように、純利益は保有株の評価で大きく振れます。本業の営業利益を分けて見ることが大切です。
依存度が高い会社もあるブロードコムのTPU設備のリース料は5年間で約1,612億ドル、年平均で約320億ドルです。ブロードコムの年間の売上高(直近3か月の296億ドルを1年分に直すと約1,180億ドル)の約3割にあたり、アンソロピックの成長が鈍ったときの影響も大きくなります。

年平均と割合は米株図鑑編集部の試算です。実際の支払いは年ごとに均等とは限らず、リース料は設備が使えるようになってから支払いが始まります。

第8章

目論見書に書かれた主なリスク

目論見書の「リスク要因」の章は、26ページから約120ページまで、約94ページに及びます。会社自身が「こういうことが起きたら業績や株価に悪い影響が出る」と伝える部分で、AI専業の会社らしい項目が並んでいます。

分野目論見書の主な記載
AIそのもの高度なAIは、適切な安全対策なしに運用されれば「人類に壊滅的または存亡に関わるリスクをもたらし得る」という懸念がある。AIがAIの研究開発を自動化し、安全性の評価が追いつかなくなるとリスクが高まる
保険大きな事故が起きた場合、「1社の保険会社だけでなく、保険業界全体でも引き受けきれない可能性がある」
実験機器・ロボットAIが実験機器やロボットを操作する場合の事故のリスク。自社で分子生物学のラボも運営している
競争①最先端のAIでは、グーグルとOpenAIを主な競合として名指し。資金や計算資源、知名度で自社を上回るとしている。②低価格のAIとの競争。学習済みのモデルが公開され誰でも自由に使える「オープンウェイト」のモデルは、性能より費用を重視する用途で顧客を奪い、値下げの圧力になり得る。③他社がClaudeの回答を大量に集め、それを手本に自社のAIを安く訓練する「蒸留」などで、性能の差が縮まるおそれ。実際にそうした試みがあったとも書いている
他社への依存スマホやパソコンの基本ソフト(OS)やアプリストアは、アップルやグーグルなど他社が運営している。こうした会社がルールを変えたり、自社のAIを優先したりすると、利用者がClaudeのアプリを入手・利用しにくくなる可能性がある
計算資源①調達先が限られている。AI用の最先端の半導体は、世界の生産の大半が台湾(主にTSMC)に集中しており、地震や台湾と中国の緊張などで生産が止まれば影響は何年も続き得る。AI用の高速メモリーも、SKハイニックス、サムスン電子、マイクロンの3社が大半を作っている。②必要な量を何年も前に予測して契約しなければならず、後から変えにくい。過去には必要量を大きく低く見積もり、計算資源が不足して製品の開発や提供に影響が出たとも書いている
政府・規制米国防総省との係争(大規模な監視や完全自律型兵器への利用を拒んだことが発端)。2026年6月には米商務省の輸出規制で上位モデルを一時停止した
著作権・訴訟著作権侵害の集団訴訟を15億ドルで和解。音楽出版社や掲示板サイトのRedditからも訴えられている
株主の権利・希薄化議決権の集中に加え、転換社債や各社の資金枠、公益基金への追加拠出、従業員の株式報酬など、将来株式が増えて価値が薄まる要因が多い

第3章で触れた「売上の8割超が発表から半年以内の新しいAIから」という構造も、競争リスクと合わせて見ておきたい点です。

第9章

市場環境:中間選挙・FOMC・データセンターへの反発

アンソロピックの上場は、米国の中間選挙(2026年11月)と重なる時期に予定されています。AI関連株を取り巻く市場環境も確認しておきましょう。

中間選挙後の株価の経験則

第二次世界大戦後、中間選挙後12か月のは、毎回上昇してきました。選挙前の不透明感が晴れるためと説明されます。ただしこれは過去の傾向であり、今回も同じになる保証はありません。

データセンターへの反発

AI用データセンターの建設が広がるなかで、電気代の上昇などへの不満から、建設に反対する声が強まっています。

調査対象近所へのデータセンター建設への反対
全体反対71%(うち強く反対48%)
民主党支持者強く反対56%
共和党支持者強く反対39%

出典:Gallup(2026年3月調査)。支持政党別は「強く反対」の割合で、無党派は48%。Gallupは、どの支持層でも過半が反対しているとしています。

実際に規制の動きも出ている(メイン州の例):2026年4月、米北東部のメイン州で、州議会がデータセンターの建設を一定期間認めない「一時停止法案」を可決しました。環境への影響や、電気代の上昇への懸念が背景にあります。この法案は、ミルズ知事が拒否権を行使したため成立しませんでした。ただし知事は、一時停止そのものに反対したわけではありません。州内のジェイ町では、閉鎖した工場の跡地にデータセンターを建てる計画があり、地元は雇用のために支持していました。知事は、法案がこの計画を例外として認めていないことを理由に拒否し、例外があれば署名したとしています。

つまり、州議会も知事も、建設を止めること自体には前向きだったということです。同じような規制が他の州にも広がれば、データセンターの建設が遅れます。その場合、クラウド大手の設備投資や、アンソロピックが計算資源を確保する計画に影響が出る可能性があります。

金融政策(FOMC)

  • 2026年10月28日のは、政策金利の誘導目標を3.75〜4.00%で据え置きました。
  • 同日の記者会見で、ウォーシュFRB議長が会合の構成を変えると発表しました。来年秋からは、金利を決める会合7回と、戦略を議論する会合1回。2028年は金利を決める会合6回と戦略会合2回で、いずれも年計8回です。
  • 金利が高いままだと、将来の利益に期待して買われる成長株の株価には、重しになりやすいとされます。

日本の投資家にとって

日本には、大規模なAIモデルを開発する中心的な上場企業がありません。ただし、アンソロピックやクラウド大手がAI用のデータセンターに巨額を投じれば、その設備を支える日本の部品・装置メーカーにも需要が波及します。目論見書に直接の取引相手として名前が出てくるわけではありませんが、AIデータセンター投資の広がりという流れの中で、次のような分野が注目されています。

分野主な日本企業(証券コード)AIデータセンターとの関わり
メモリーキオクシアホールディングス(285A)AIサーバーのデータを蓄える記憶装置(SSD)向けのNAND型フラッシュメモリー
半導体の検査・製造装置アドバンテスト(6857)、東京エレクトロン(8035)、ディスコ(6146)AI半導体や高速メモリー()を作る・検査するための装置
半導体の部材イビデン(4062)AI半導体を載せる基板
通信ケーブルフジクラ(5803)、古河電気工業(5801)データセンター内外をつなぐ光ファイバー
電力設備日立製作所(6501)、三菱電機(6503)送配電網、停電時に電気を送る無停電電源装置(UPS)

なお、目論見書が高速メモリー(HBM)の供給元として挙げる3社(SKハイニックス、サムスン電子、マイクロン)に、日本企業は含まれません。日本勢は、HBMを作るための装置や部材の分野で関わっています。これらの会社の業績はAI以外の事業や景気にも左右されるため、アンソロピックの上場だけで株価が決まるわけではありません。

大型IPOの前には、購入資金を用意するために他の株が売られるという見方もありますが、日本株で実際にそうした売りが出ているというデータは確認できていません。

第10章

上場後に注意したいこと

売却制限(ロックアップ)は細かく段階的に解除

「」とは、上場前から株を持っている役員や大株主などが、上場後一定期間、株を売らないと約束する仕組みです。通常は上場から180日間が一般的ですが、アンソロピックは制限を細かく分けて解除します。

対象解除の仕方(概要)
創業者以外の取締役・役員・一部の従業員上場初日から最大10%を売却可能。2026年通期の決算発表後に累計45%まで
一部の株主(180日グループ)上場後27日・48日・62日・76日などに数%ずつ解除。最終的には2027年1〜3月期の決算発表後か180日後の早い方
大口の株主(365日グループ)ごく一部ずつ解除され、全てが解除されるのは2027年7〜9月期の決算発表か365日後の早い方
創業者原則として、2027年7〜9月期の決算発表後か上場から365日後の早い方まで、株を売ったり人に譲ったりできない。ただし、2027年1〜3月期の決算発表後か上場から180日後の早い方からは、保有株の最大29%まで売却などができる

細かい比率と日程は目論見書の「引受」の章に基づきます。訂正版の目論見書で変わる可能性があります。

解除が細かく分かれているため、大量の株が一度に出回る「壁」は生じにくい一方、上場後1年間にわたって売りが出続ける可能性があります。さらに、アマゾンの転換社債のうち保有上限を超えた分も、四半期ごとに株式に転換されていきます。

株価が「10倍」になる難しさ

報道どおり上場時の評価額が1.5兆〜2兆ドルなら、株価が10倍になるには、時価総額が15兆〜20兆ドルになる必要があります。不可能とまでは言えませんが、小さな会社に比べて難易度ははるかに高くなります。上場後の株価を見るときは、売上の伸びが評価額に見合うかを確かめることが大切です。

公開価格が決まる前に確認したいこと

  • 訂正版の目論見書で示される「公開価格の仮条件」と、そこから計算される評価額
  • 2026年7〜9月期の正式な業績
  • 日本での公募の届出書と、取り扱う証券会社

よくある質問

Q. アンソロピックはいつ上場しますか?

目論見書には上場日の記載はありません。報道では、2026年11月16日の週や、感謝祭(11月下旬)の週と伝えられています。

Q. 日本から買えますか?

上場後は、米国株を取り扱う日本の証券会社を通じて買えるようになるのが一般的です。目論見書には「日本での公募を含む」とありますが、どの証券会社で申し込めるかはまだ発表されていません。

Q. 赤字の会社なのに、なぜ注目されるのですか?

売上の伸びが非常に大きく、本業の営業利益も黒字になったからです。巨額の純損失のほとんどは、現金の支出を伴わない会計上の評価損です(第4章)。

Q. 配当はもらえますか?

これまで配当を支払ったことはなく、当面も予定はありません。

Q. 上場すると、どの米国株に影響がありますか?

大株主であり計算資源の提供元でもあるアルファベットとアマゾン、クラウドを提供するマイクロソフト、TPU設備をリースするブロードコムなどです。特にアマゾンとアルファベットは、アンソロピック株の評価額の変動が自社の利益に影響します(第7章)。

Q. 上場直後に株価が大きく動くことはありますか?

一般に、大型のIPOは上場直後に株価が大きく動きやすい傾向があります。アンソロピックの場合、上場初日から一部の役員・従業員が株を売却でき、その後も売却制限が段階的に解除されます(第10章)。

まとめ

  • 目論見書からは、売上の急拡大(半年で前年同期の約14倍)と、2026年4〜6月期の本業の黒字化という明るい面が見えてきます。
  • 807億ドルの純損失の約9割は、会社の評価が上がるほど膨らむ転換社債の評価損で、現金は出ていきません。数字の大きさより中身を見ることが大切です。
  • 一方で、売上の8割超が発表から半年以内の新しいAIから生まれる構造、クラウド大手などとの巨額の長期契約、一般株主の限られた議決権という注意すべき面もあります。
  • アンソロピック株は上場まで買えませんが、支出を受け取る側のアルファベット、アマゾン、マイクロソフト、ブロードコムなどはすでに上場しています。ただし契約が各社の業績に占める割合はさまざまです。

米株図鑑で関連銘柄を見る手順

STEP 1銘柄ページを開く第7章の銘柄(GOOGL、AMZN、MSFT、AVGO、AMD、NVDA、MU)から選びます。例:アルファベット →
STEP 2売上の伸びを確かめる「セグメント」で、クラウドやAI半導体など、関係の深い部門の売上が伸びているかを見ます。
STEP 3利益の中身を確かめる「財務」の損益計算書で、本業の営業利益と、投資の評価損益を含む純利益を分けて見ます。
STEP 4設備投資の負担を確かめる「キャッシュフロー」で、稼いだ現金に対して設備投資が重すぎないか(フリーキャッシュフローがマイナスになっていないか)を見ます。
STEP 5株価が業績に比べて高すぎないかを確かめるPERなどを、同じ分野の他社や過去の水準と比べます。比較を開く →

用語集

目論見書
上場する会社が、事業内容、業績、リスクなどを投資家に開示する書類。株数や価格が空欄の段階のものを仮目論見書という。
AIモデル
質問に答えたり文章やプログラムを書いたりする、AIの本体。大量のデータで学習して作られ、性能を高めた新しいモデルが数か月ごとに発表される。
従量課金
使った量に応じて料金を支払う仕組み。
SEC
米証券取引委員会。上場企業の情報開示のルールを定め、監督する政府機関。
IPO
未上場の会社が、誰でも株を売買できるように証券取引所に上場すること。
計算資源
AIの開発や運用に使う、AI用の半導体をそろえたコンピューター設備。
営業利益
本業で稼いだ利益。売上から売上原価と販管費などを差し引いて求める。
NRR
既存顧客の支払額が、1年前と比べて何%になったかを示す指標。110%なら、新しい顧客がいなくても売上が10%増えたことになる。
サブスクリプション
一度導入すると、毎年契約を更新して使い続ける定額課金の仕組み。提供する企業には毎年繰り返し売上が入る。
営業キャッシュフロー
本業で実際に入った現金と出た現金の差。
設備投資
工場、機械、店舗、システムなどへの支出。
転換社債
決められた条件で将来、株式に換えられる借入金。会社の株価が上がるほど、貸し手の権利の価値も上がる。
公正価値
帳簿上の金額を、毎期その時点の価値に合わせて修正する会計の方法。評価が上がった分や下がった分は損益に計上される。
Non-GAAP
社員への株式報酬などを差し引かない、会社独自に調整した利益。GAAP(米国の正式な会計基準)の利益では赤字という企業もある。
株式報酬
給料の一部を、現金ではなく自社の株で渡す仕組み。現金は出ていかないが、株数が増えるため株主にとっては実質的な費用。
RSU
決められた条件(一定期間の勤務など)を満たすと、従業員が会社の株を受け取れる権利。
希薄化
新しい株式が発行され、既存の株主の1株あたりの価値や持ち分が薄まること。
長期利益信託
アンソロピックの取締役の過半を選ぶ、会社から独立した信託。受託者は会社と金銭的な利害関係を持たない。
公益目的会社
株主の利益だけでなく、定款に掲げた公益目的も考えて経営することが法律で求められる営利の会社。米デラウェア州会社法などに定めがある。
フリーキャッシュフロー
営業キャッシュフローから設備投資を引いた、会社が自由に使える現金。
S&P500
米国の代表的な大企業約500社で構成する株価指数。米国株市場全体の動きを表す指標としてよく使われる。
FOMC
米国の中央銀行にあたるFRBが、政策金利を決める会合。
HBM
メモリーの半導体を何枚も積み重ねて、AI用の半導体のすぐ横に置き、大量のデータを一度にやり取りできるようにした高速メモリー。AIの計算に欠かせず、SKハイニックス、サムスン電子、マイクロンの3社が大半を作っている。
ロックアップ
上場前からの株主が、上場後一定期間、株を売らないと約束すること。

米国株・投資の用語集(95語)をすべて見る →

出典

  • Anthropic, PBC Form S-1(仮目論見書、2026年10月26日提出、SEC EDGAR)
  • Anthropic公式サイト:東京オフィス開設(2025年10月)
  • NEC・富士通:アンソロピックとの提携の発表(2026年4月・5月)
  • Oracle:OCIでのGoogle TPU提供の発表(2026年10月27日)
  • Amazon.com:2026年7〜9月期決算(Form 8-K、Exhibit 99.1)
  • ブロードコム、AMD、エヌビディア、マイクロンの決算発表
  • FRB:2026年10月28日のFOMC声明
  • 上場時期・評価額・調達額:ウォール・ストリート・ジャーナル、ロイター、Fortune、ブルームバーグ
  • アルファベット、マイクロソフト、アマゾンの決算報道:9to5Google、SiliconANGLE、Fortune、The Star、GeekWire
  • データセンターへの世論:Gallup(2026年3月調査、Washington Timesの報道)
  • メイン州知事の拒否権:Gizmodo
  • FOMCの会合日程の変更:Seoul Economic Daily

本コラムは、アンソロピックが2026年10月26日に提出した仮目論見書と、公開されている報道をもとに作成しています。特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。投資の判断は、最新の目論見書や証券会社の資料を確認のうえ、ご自身で行ってください。